商品企画と商品企画七つ道具(P7)

   Neo P7(新・商品企画七つ道具)について


1.Neo P7とは?

 2013年8月、神田著「神田教授の商品企画ゼミナール−Neo P7 ヒット商品を生む
システム−」
が日科技連出版より発行されました。ここ2年くらいかけて構想し、執筆
した本です。私の娘が文中のイラストを描き、院生(2012年度当時)の浅野瑛太君が
事例の原案を執筆してくれました。なかなかの仕上がりと自負しています。

      
 学生がノートに落書き、という楽しいイメージの表紙です
 上の説明1行目(本の題名)または画像をクリックするとAmazonのページに
  移動します。
 


 この中で新たに提案したのが仮説発掘を重視した企画のシステム、
   Neo P7(新・商品企画七つ道具
です。全体の流れは下記のようになっています。
  @ 仮説発掘法
  A アイデア発想法
  B インタビュー調査
  C アンケート調査
  D ポジショニング分析
  E コンジョイント分析
  F 品質表

@が追加、ABCDは以前にもありましたが、位置が変わっています。
E、Fは前と変わりません。

 



 
     図1、 Neo P7の全体像


2.Neo P7の考え方

 以前のP7(P7第1パターン、革新型)では、    
   インタビュー調査 ⇒ アンケート調査 ⇒ ポジショニング分析 ⇒ 
   アイデア発想法  ⇒ アイデア選択法 ⇒ コンジョイント分析 ⇒
   品質表
という流れで商品企画を行うことを提案していますが、この方式ですと   
 ・アンケート調査で評価してもらう対象が(主に)既存の商品となり、この調査・分析
  に(ポジショニング分析も含めて)多くの時間やエネルギーがかかり過ぎる。
 ・アイデア発想法が後半にあるため、画期的なアイデア創出に十分な時間が取れず、
  アイデアが出ても、十分に検討する余裕がない。

そのため、P7第2パターン(創造型)
  インタビュー調査 ⇒ アイデア発想法   ⇒ アイデア選択法   ⇒ 
  アンケート調査  ⇒ ポジショニング分析 ⇒ コンジョイント分析 ⇒
  品質表 
という別の流れを作り、最初からアイデアを大量に創出し、その中から創造的な商品を選び
出すというプロセスを提案し、好評をいただきました。

 しかし、これでもまだ十分とは言えません。問題は
   「インタビュー調査が出発点である」
ことです。最初で失敗すると仮説の質も量も貧相なものに陥る危険性があります。しかも
この手法は一般の商品企画者が最初の段階で実施するにはシステマティックな手法ではない
ために難しいし、多数の仮説はなかなか創出できるものではありません。


 最初でしかも重要であるがために、広範囲かつ多数回のインタビュー調査が必要となるの
ですが、結構な予算がかかり、手間も莫大にかかり、特にグループインタビューでは、何
よりも優秀な司会者(モデレーター)不足のため、なかなか大変なのです。いきおい、少数
の回数で済ませなければなりません。
「直接顧客の声を聞く」というメリットはありますが、少数回では仮説もたくさんは得られ
ません。グループインタビューでは新仮説は1回で2〜3件くらいしか出て来ませんし、
それらが後々否定されることもザラですので、もっと多くの仮説が欲しいところです。


 そこで、新たに「仮説発掘法」と「アイデア発想法」を最初に入れて、インタビュー調査
以下をすべてこの仮説の検証と修正に充てるという発想で再構成をしてみました。 十分に
多くの仮説の「タネ」を仕込んで、大きく見事に開花しそうなモノをじっくり選定する。
更にそれらを組み合わせて素晴らしいアレンジ・フラワー(商品)として決定する。その
ようなイメージです。
 



3.Neo P7の特長

 Neo P7の特長は以下の2つに集約されます。特に第1の特長が決定的に重要です。

<特長1> 仮説発掘&新規アイデア重視


 「ワォー!」というくらいの新鮮な仮説がたくさん欲しい、というのが企画現場の共通
の悩みです。どんな有名企業でも、中小企業でも、この悩みは同じです。これにとことん
応えるのがNeo P7の役割です。
どんどん、ザクザクとユニークなアイデアや仮説を出し
ます。これまでのステップでは主に第1の手法・インタビュー調査で仮説を出すことに
なっていましたが、今や新たな<画期的>ヒット商品創造にはそれでは不足です。
 巷には商品が溢れています。Twitter、Facebook、ブログ等を通じて多量の商品情報が
瞬時に流通する時代になっています。商品企画も次々に新鮮なニーズを発見し、トライする
姿勢が求められています。このために前半の@〜Bで大量の仮説を出して、優れた案に絞り
込みます。具体的には、
 @仮説発掘法で顧客の行動・考えを探り、仮想商品アイデアを追究します。  
 Aアイデア発想法で更にユニークな仮想商品アイデアを出します。
  ここまでで相当多数(数十〜100件程度)の仮説を得ることができます。  
 Bインタビュー調査で@、Aで得た仮説を顧客に問いかけ、どのような商品が良いかの
  方向付けをします(仮説の絞り込み)。
これらをC以降で定量的に検証して更に絞り込み、明確に売れる案を作り上げていきます。

 

<特長2> ステップの明快さ

 @〜Bを「仮説発掘ステップ」、C〜Fを「仮説検証・発展ステップ」と明快に区分で
き、しかも、方法論としても、
    @〜C、Fを定性的・創造的方法(右脳的方法)
    C〜F  を定量的・解析的方法(左脳的方法)
と割合わかりやすくなります。その分、企画作業(日程)も前半・後半とステップを進行し
やすくなります。従来のP7はこの辺が入り組んで出て来るため、やや混乱しがちで、特に
アイデア発想法のステップが後半にあるため、最初から全く新しい商品仮説を作りたい方に
は「?」と思うことがありました。
 ただし、
   C(アンケート調査)は両方の要素を含みます
   F(品質表)は、やり方によっては定量的とは言えません
という点は注意して下さい。



4.仮説発掘法とは

 Neo P7で新たに追加された大きな手法は「仮説発掘法」です。
これは、ユニークな仮説を効率良く多量に出す手法で、フォト日記調査と仮説発掘アンケート
の2手法から選択して活用します。

@ フォト日記調査

 図2のような、文字通りフォト(写真)を用いた日記を顧客に作ってもらい、そこから新し
い仮説の発見を導く方法で、手法としては従来から存在していましたが、近年のデジカメ、
スマートフォンの爆発的普及でその利用価値は格段に高くなったと言ってよいでしょう。
特定課題に関する情報を大量に得られるため、顧客の状況や心理・行動を知り、発想のための
ヒントを一気に収集できます。

 後の処理も考え、ターゲット層に合致する20名前後の方に依頼します(少数では情報量が
少なく偏るし、多数では処理に膨大な手間がかかります)。記載してもらうのは1週間が
理想的です。時間の経過に沿って1日の主なイベントを記述し、主題の商品関連の記述と
その周辺の情報と写真を入れてもらいます。

 例えば図2は飲料をテーマに実施した例ですが、その日飲んだ飲料はすべて記録し、飲ん
だ際の状況、味や缶に対する印象(特に不満)などを詳細に、かつストレートに記入して
もらいました。その他、飲料と関係する1日の食事/間食はすべて記入してもらっています。
       
           図2.フォト日記の作成例

     

 回収後に担当者全員で日記を読み、感想や気づいたことをディスカッションするのは勿論
のこと、表1のような一定のアイデア創出フォーマットを活用することにより、システマ
ティックにアイデアを創出できるようになります。


 表1は「OLのためのランチセット」というテーマで実際のOLの1日3食のフォト日記
から画像や文章を整理し、「気づき」の「問題点」以降は神田が独自に考えて記入した
ものです。わずか1ページの日記から8件の仮説的商品案を抽出しました。         

      表1.フォト日記からのアイデア創出フォームの記入例




<ポイント>
・作成してもらう日数・・・1週間が原則ですが、それが厳しい場合、週の中の状態の異な
 る4日間(例えば平日2日+土日など)を指定します。


・記入内容・・・・幅広い方が、後から仮説発掘に役立ちますが、「何でも記入」はモニ
 ターの負担が過大となり、また 個人情報に触れるので嫌がられます。必要な範囲を明確
 に依頼することが重要です。

・書き方・・・・・単なる記録ではありません。感動や不満など、気持ちのこもった内容が
 必要です。その意味では、写真を並べたような日記は意味が取りにくいので、適しません。

・アンケート・・・日記を補うために、その人や生活状況がわかるような、簡単なアンケー
 ト調査票を付しておくとよいでしょう



A 仮説発掘アンケート

 アイデアを一般の方にWebアンケートなどで出してもらい、大量の仮説創出に結びつける
手法です。これも類似の手法は存在しましたがが、小久保雄介氏(*注)の研究で改良を重
ね、大量のアイデアを短期間で創出できるようになったため、費用対効果は極めて高いもの
になりました。例えば300名のモニターに平均2件記入してもらえれば、一気に600件のアイ
デアを収集できます。もちろん類似のアイデア、不要なアイデアも大量に集まるが、目的
指向の短文記述式のため、ダイレクトに良好な提案を顧客から得られるのは大変に効率的
です。神田の経験では全体の10%前後は使える「良好なアイデア」であり、気づかなかった
潜在ニーズも多々出現します。  
    (*注) 小久保雄介(2013)「商品企画における仮説創出手法の開発と活用に関する研究」
          成城大学経済学研究科博士学位論文 


 図3はその例です。対話型のユニークな形式になっています。ポイントは次の3点です。
   ・2人の気楽な対話形式で回答意欲を格段に高めること
   ・親しんでいる商品の長所(または短所)を語ってもらうこと
   ・他人のアイデアを示して思考を誘発すること
これらの準備の後、一気に本人の欲しい商品アイデアを記入してもらいます。
       

        表2.仮説発掘アンケートの例(化粧品) 



         
         (語り合うかのように!)

 アンケート回収後は大量のアイデアの評価を行いますが、単独での評価はどうしても主観
的になるので、数名で点数評価し(場合によっては複数の評価項目でウェイト付けして総合
評価を行い)その平均点を用います。


<ポイント>
・質問文の表現・・・・・業種、商品により適切な表現で質問文を工夫せねばなりません。
 なるべく生き生きとした会話体で「語るように」書くことです。

・モニター(回答者)の質・・熱心で関心のあるモニターが集まれば良いのですが、適当に
 アイデアを書かれてしまうと、失敗します。

・評価者の質・・・アイデアの内容がわかり、センスを持った方が複数で評価するのが望ま
 しいです。



5.アイデア発想法での追加手法!
        「ブレインライティング」
 アイデア発想法は下記の3つに整理しました。
  @ 焦点発想法
  A アナロジー発想法
  B ブレインライティング
このうち、@Aはすでに紹介しています。Bは新規にP7に採用した手法です。
 元々「書くブレインストーミング」と言われ、4〜8人程度のグループで短時間にアイデア
をどんどん出すのに極めて適した方法です。下記のような形式の空白の用紙を人数分用意し、
全員が隣り合って座ります。各自が第1行に3つずつ願望、ウォンツを記入します。5分経過
したら隣に回し、自分は反対側から回って来た用紙の第2行に第1行の 内容を具体化して
記入します。以下同様に5分ごとに用紙を隣に回し、次々に記入内容を読み、発展させた内容
を考えて記入していきます。

           

 5分単位でどんどん記入しないといけないので、必然的にアイデア発想に迫られます。グルー
プで短時間にアイデアを出したい場合や、意見を皆の前で述べるのが苦手なメンバーが多い場合
には好適な手法です。1枚のシートに大抵1〜2件は良いアイデアが書かれるので、30分で10件
程度は良好なアイデアを創出できます。
 
        表3.ブレインライティングの例(電車) 

       

<ポイント>
・最初の1行目は・・・・具体的で細かなアイデアを書いてはいけません。次々に他の人が
 自由に発展させるのが面白いのです。

・メンバーの多様性が必要 ・・・・同じような人の集団より、男女職種年齢など多様な人たちの
 集団のほうが面白い発想が出て、互いに比較検討できるので良い結果が期待できます


・ネット上でも可能・・・・数名がネットでつながれば一定時間ごとに同時に送信することで擬似
 的にブレインライティングを実施することが可能です。

HOMEへ    BACK